うわあ、今日も雨か。
駅を降りた瞬間に、大きな雨粒が僕へ向かってくる。
梅雨に入ってからというもの、雨の日は既に3分の2を超えている。
折り畳みの傘が手放せないこの時期、傘をあえて持ち運ばない大馬鹿が……
「オバターだよな、やっぱ」
前方から歩いてくるオバターは傘を差していない。
オ「いやあ、だって金がないんだもんよ」
僕の傘に入れてやると、オバターは言い訳がましい。
オ「ここんとこ映画の制作で立て込んでてさ。金のこと考えてなかったわ」
映画にかける情熱は見習いたい。でも、次のオバターの一言は僕を少しだけ怒らせた。
オ「あーあ、どっかからカネが降ってこないかなあ」
ミ「甘いぞ、オバター!」
オ「お、おう、分かってるよ。ちょっとした冗談じゃないか」
お金が降ってくるというのが冗談なのはわかっている。僕が気に食わないのは、オバターがまだ節約を試していないからだ。
「お金は降ってくるもんじゃないわ〜。削り出すものなのよ」
ミ、オ「「うわ、びっくりした」」
どこから現れのか、キモエ姐さんが僕たちの傘に入り込んでいた。
いや、とっくにキャパオーバーなんですけど。
今日の姐さんがお召しになられているのは、服全面にプリントされたカエルがポイントの雨合羽だ。
オ「古代エジプトみたい……」
そう、このカエルがなぜだか壁画タッチで描かれているのだ。
相変わらずセンスが分からない(悪いとは言わない)。
キ「オバター、お金に困っているのね?」
オ「! そうなんすよー。姐さん貸してもらえませんかね?」
こう言うと、姐さんは一層怖い顔になった。
キ「それが甘いのよ! あんた自分で努力もしないで。根性叩き直してあげるわ! ついてきなさい」
〜キモエ姐さんの巣窟(喫茶店)〜
キ「さ、オバター選びなさい。自分で買うことを想定するのよ」
オ「え、じゃあパスタセットで……」
キ「はい、ストップ!」
オ「え、なんすか?」
キ「なんであんたは学生限定メニューを検討しないのかしら?」